無残やな

     

     遼佑君は死んでしまった。


     たった九年の生涯を終えて逝ってしまった。
     義父・進藤悠介に首を絞められたのだという。


     とても利発な顔をしたいい子に思えた。
     義父なる人間は私の故郷の言葉でいうと、<やろこ>
     である。まだ大人にもなりきれず、こんな人間がなんで人の子の親
     になり得よう。


     昨日は一日つらかった。
     私の身辺にもいろいろなことがあって泣いた。


     また亡父のことで恐縮だが、父の母は八歳の時死んだという。
     義弟との財産争いもあって田畑すべてを義弟に譲って
     街に出てきた。
     生活は貧窮の底を極めた。
     父は70ぐらいの時まで、酒を飲んでは実母恋しさに涙を流した。
     悪さをしたとか、同腹の弟と庭の柿の木に括り付けられた
     とか言って泣いた。老人になっても泣くなんて!


     「お前たちはいいなあ。お母ちゃんがいて・・・」
     私はきょとんとした。当たり前だ!と思った。
                  実は父は老人になっても実母のことを恋うていたのである。
         
     ニュースではSNSで知り合った男だという。
     なんで、なんで、男がいないとダメなのか。
     一人で生きられなかったのか!
     子供より男だったのか。


     そんなところで知り合ったのでは、ろくな男がいるはずがない。
     
     命はかえらない。


     写真でしか知らない遼佑君のことを思って泣くしかなかった。
        亡父の涙が今にして解って泣いた。
     人間って、悲しいなぁとつくづく思う。


        今日の雨は涙雨かも。